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島伝ひ敏馬の崎を漕ぎ廻れば
大和恋しく鶴さはに鳴く

歌の意味
島から島へと伝って敏馬の崎を漕ぎめぐって行くと、大和が恋しく思われるのに、鶴がしきりに鳴いている。
鑑賞
巻第三 雑歌 389

詞書は前の歌に続き「羈旅の歌一首并せて短歌」の「反歌」
 船旅を詠んだ長歌に添えられた反歌で、巻第三の雑歌の部を締めくくる歌である。島伝いに摂津の敏馬の崎を漕ぎめぐると、大和が恋しく思われ、そこへ鶴がしきりに鳴いて望郷の思いをかき立てている。左注には、若宮年魚麻呂がこの歌を誦したが、作者は分からない、とあり、作者は確定できない。本巻の第二百五十首の柿本人麻呂の歌も敏馬を過ぎる船旅を詠み、第二百七十三首の高市黒人の歌も「鶴さはに鳴く」で結んでおり、旅の歌の景物が響き合っている。

 初句「島伝ひ」 島から島へと伝って行くこと、の意である。
 二句「敏馬の崎を」 敏馬の崎は摂津国の岬で、現在の神戸市灘区のあたりである。本巻の第二百五十首にも敏馬が詠まれている。
 三句「漕ぎ廻れば」 漕ぎめぐって行くと、の意である。
 四句「大和恋しく」 大和が恋しく、の意で、望郷の思いを示している。
 結句「鶴さはに鳴く」 鶴がしきりに鳴く、の意である。本巻の第二百七十三首と同じ結句で、鶴の声が旅人の望郷の思いをかき立てている。

しまづたひ:島から島へと伝って行くこと
みぬめ:摂津国の地名。現在の神戸市灘区のあたり
たづ:鶴
出典
万葉集
前の歌
いにしへに梁打つ人のなかりせば ここにもあらまし柘の枝はも
次の歌
軽の池の浦廻行き廻る鴨すらに 玉藻の上にひとり寝なくに