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我が祭る神にはあらず大夫に
憑きたる神ぞよく祭るべし

歌の意味
その社は私の祭る神ではありません。立派なあなたにとりついている神ですよ。大切にお祭りなさい。
鑑賞
巻第三 譬喩歌 406

詞書「娘子の復た報ふる歌一首」
 巻第三の譬喩歌の部に収められた歌である。赤麻呂の重ねての求愛に、娘子が再び答えた歌である。恨めしいとおっしゃるその社の神は、私が祭る神ではなく、あなたにとりついている神なのだから、よくお祭りなさいと言い、奥様を大切になさいと、機知をもってきっぱり退けている。三首の贈答は、娘子の見事な切り返しで結ばれている。作者は娘子とのみ記され、名は伝わらない。
 佐伯赤麻呂と娘子の贈答は、春日の社と粟に託して、妻のある男の求愛とそれを退ける女のやりとりを詠んだ一連である。

 初句「我が祭る」 私が祭る、の意である。
 二句「神にはあらず」 神ではない、の意で、ここで句切れとなる。前歌の「社し恨めし」を受け、その神は自分とは関係がないと言っている。
 三句「大夫に」 大夫は立派な男子のことで、ここでは赤麻呂を指す。
 四句「憑きたる神ぞ」 「憑く」はとりつく意、「ぞ」は強意で、あなたにとりついている神だ、の意である。赤麻呂の妻を寓している。
 結句「よく祭るべし」 「べし」は当然、命令で、大切にお祭りなさい、と結んでいる。

ますらを:立派な男子
つく:とりつく
出典
万葉集
前の歌
春日野に粟蒔けりせば鹿待ちに 継ぎて行かましを社し恨めし
次の歌
春霞春日の里の植ゑ子水葱 苗なりと言ひし枝はさしにけむ