一日には千重波しきに思へども
なぞその玉の手に巻きかたき
- 歌の意味
-
一日のうちに幾重にも寄せる波のように、しきりに思っているけれど、どうしてその玉は手に巻きつけることが難しいのだろう。
- 鑑賞
-
巻第三 譬喩歌 409
詞書「大伴宿禰駿河麻呂の歌一首」
巻第三の譬喩歌の部に収められた歌である。一日のうちに何度も寄せる波のように、しきりに思っているのに、どうしてその玉を手に巻くことができないのかと、思う人を自分のものにできないもどかしさを詠んでいる。玉を恋しい女にたとえ、思いの激しさと、それが実らない嘆きとを対比している。
作者の大伴駿河麻呂は大伴御行の孫とされる奈良時代の官人で、のちに陸奥按察使兼鎮守将軍として東北の経営にあたり、宝亀七年(776)に没した。
初句「一日には」 一日のうちには、の意である。
二句「千重波しきに」 千重波は幾重にも重なって寄せる波、「しきに」はしきりに、の意である。
三句「思へども」 思っているけれど、の意で、「ども」は逆接である。
四句「なぞその玉の」 「なぞ」はどうして、の意で、玉は恋しい女を寓している。
結句「手に巻きかたき」 手に巻きつけることが難しい、の意で、「なぞ」を受けて連体形で結んでいる。
ちへなみ:幾重にも重なって寄せる波
- 作者
-
大伴駿河麻呂
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
なでしこがその花にもが朝な朝な 手に取り持ちて恋ひぬ日なけむ
- 次の歌
-
橘を宿に植ゑ生ほし立ちて居て 後に悔ゆとも験あらめやも