岩戸破る手力もがも手弱き
女にしあればすべの知らなく
- 歌の意味
-
岩戸を打ち破るほどの腕の力があればよいのに。か弱い女の身なので、どうしてよいかわからない。
- 鑑賞
-
巻第三 挽歌 419
詞書は前の歌に続き「河内王を豊前国の鏡山に葬る時に、手持女王の作る歌三首」
手持女王の三首の三首目で、一連を締めくくる歌である。墓の岩戸を打ち破って亡き人を取り戻す力があればよいのに、か弱い女の身ではどうすることもできないと、やり場のない悲しみを詠んでいる。天照大神が籠もった天の岩戸を手力男神が開いたという神話を踏まえ、前歌の「岩戸」を受けている。
手持女王の三首は、大宰帥として筑紫で没した河内王を、豊前国の鏡山に葬った時の挽歌の一連である。
作者の手持女王は河内王の妻とされる奈良時代初めの女性であるが、伝は未詳である。
初句「岩戸破る」 墓の岩戸を打ち破る、の意で、前歌の「岩戸」を受けている。
二句「手力もがも」 手力は腕の力、「もがも」は願望の終助詞で、腕の力があればよいのに、の意である。天の岩戸を開いた手力男神を思わせる。ここで句切れとなる。
三句「手弱き」 か弱い、の意で、四音の字足らずである。
四句「女にしあれば」 「し」は強意で、女の身であるので、の意である。
結句「すべの知らなく」 「すべ」は方法、「なく」は打消のク語法で、どうしてよいかわからないことよ、と嘆きで結んでいる。
たぢから:腕の力
をみな:女性
すべ:方法、手段
- 作者
-
手持女王
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
豊国の鏡の山の岩戸立て 隠りにけらし待てど来まさず
- 次の歌
-
およづれのたはこととかも高山の 巌の上に君が臥やせる