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川風の寒き泊瀬を嘆きつつ
君が歩くに似る人も逢へや

歌の意味
川風の寒い泊瀬を、あなたが嘆きながら歩いていると、亡き人に似た人にでも出逢ってくれればよいのに。
鑑賞
巻第三 挽歌 425

詞書は前の歌に続き「同じく石田王の卒りし時に、山前王の哀傷して作る歌一首」の「或本の反歌二首」
 或本に伝わる反歌二首の二首目である。川風の寒い泊瀬を、亡き人を思って嘆きながら歩くあなたが、せめて亡き人に似た人にでも出逢えればよいのにと、悲しむ人を思いやっている。左注には、この二首は紀皇女が亡くなった後に、山前王が石田王に代わって作ったものともいう、とあり、紀皇女を失った石田王の悲しみを思いやった歌と解される。古来難解な歌の一つである。
 作者の山前王は忍壁皇子の子で、奈良時代初めの王族である。養老七年(723)に没した。

 初句「川風の」 川を吹き渡る風の、の意である。
 二句「寒き泊瀬を」 寒い泊瀬を、の意で、泊瀬は葬送の地として知られた。
 三句「嘆きつつ」 嘆きながら、の意である。
 四句「君が歩くに」 あなたが歩いていると、の意で、君は亡き人を思って嘆く人を指すとされる。
 結句「似る人も逢へや」 「や」は反語とも願望とも解され、亡き人に似た人にでも逢ってほしい、の意とされる。解釈の分かれる句である。

あるく:あちこち歩き回る
作者
山前王
出典
万葉集
前の歌
こもりくの泊瀬娘子が手に巻ける 玉は乱れてありと言はずやも
次の歌
草枕旅の宿りに誰が嬬か 国忘れたる家待たまくに