百足らず八十隈坂に手向けせば
過ぎにし人にけだし逢はむかも
- 歌の意味
-
いくつもの曲がり角のある坂で手向けをしたならば、亡くなった人に、もしかしたら逢えるだろうか。
- 鑑賞
-
巻第三 挽歌 427
詞書「田口広麻呂の死にし時に、刑部垂麻呂の作る歌一首」
田口広麻呂の死を悼んだ歌である。多くの曲がり角のある坂で神に手向けをすれば、亡くなった人にもしかしたら逢えるだろうかと、亡き人との再会を願っている。八十隈坂はこの世とあの世との境にある坂と考えられ、死者の国への道を思わせる。田口広麻呂は伝未詳の人物である。
作者の刑部垂麻呂は奈良時代初めの官人であるが、伝は未詳である。
初句「百足らず」 百に足りない八十の意から、「八十」にかかる枕詞である。
二句「八十隈坂に」 八十隈坂は多くの曲がり角のある坂で、あの世へ通じる坂とされる。
三句「手向けせば」 手向けは峠や坂の神に幣を供えて祈ることで、手向けをしたならば、の意である。
四句「過ぎにし人に」 過ぎ去った人、すなわち亡くなった人に、の意である。
結句「けだし逢はむかも」 「けだし」はもしかしたら、の意で、逢えるだろうか、とかすかな望みを込めて結んでいる。
やそくまさか:多くの曲がり角のある坂。あの世へ通じる坂とされる
たむけ:峠や坂の神に幣を供えて祈ること
- 作者
-
刑部垂麻呂
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
草枕旅の宿りに誰が嬬か 国忘れたる家待たまくに
- 次の歌
-
こもりくの初瀬の山の山の際に いさよふ雲は妹にかもあらむ