愛しき人のまきてし敷栲の
我が手枕をまく人あらめや
- 歌の意味
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いとしい妻が枕にした私の腕を、ほかに枕にする人などあろうか。
- 鑑賞
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巻第三 挽歌 438
詞書「神亀五年戊辰、大宰帥大伴卿の故人を思ひ恋ふる歌三首」
大宰帥大伴卿の故人を思ひ恋ふる歌三首の一首目である。いとしい妻が枕にした自分の腕を、ほかに枕にする人などいるだろうかと、亡き妻へのひたむきな思いを詠んでいる。左注に、妻と死に別れて数十日を経て作った歌、とある。
大宰帥大伴卿の故人を思ひ恋ふる歌三首は、神亀五年(728)に大宰府で妻の大伴郎女を亡くした旅人が、亡き妻を恋い慕って詠んだ一連である。
作者の大伴旅人は大伴安麻呂の子で、中納言、大宰帥を経て大納言に至り、天平三年(731)に没した。漢詩文の教養に富み、大宰帥として筑紫にあった時には、山上憶良らとともに歌の交流の中心となった。
初句「愛しき」 いとしい、の意である。
二句「人のまきてし」 「まく」は枕にする意、「てし」は完了と過去で、妻が枕にした、の意である。
三句「敷栲の」 「枕」「袖」などにかかる枕詞である。
四句「我が手枕を」 手枕は腕を枕にすることで、私の腕を、の意である。
結句「まく人あらめや」 「め」は推量の「む」の已然形、「や」は反語で、枕にする人などあろうか、と亡き妻へのひたむきな思いで結んでいる。
たまくら:腕を枕にすること
まく:枕にする
- 作者
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大伴旅人
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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妹も我れも清みの川の川岸の 妹が悔ゆべき心は持たじ
- 次の歌
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帰るべく時はなりけり都にて 誰が手本をか我が枕かむ