帰るべく時はなりけり都にて
誰が手本をか我が枕かむ
- 歌の意味
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都へ帰るべき時がやってきた。都で、いったい誰の腕を私は枕にすればよいのだろうか。
- 鑑賞
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巻第三 挽歌 439
詞書は前の歌に続き「神亀五年戊辰、大宰帥大伴卿の故人を思ひ恋ふる歌三首」
大宰帥大伴卿の故人を思ひ恋ふる歌三首の二首目である。都へ帰る時が近づいたが、都に帰っても枕にする妻の腕はもうないと、帰京を前にした孤独を詠んでいる。前歌の「手枕」を受けて「手本」と言い、亡き妻の不在を重ねて嘆いている。次歌の左注に、この二首は京へ向かう時が近づいて作った歌、とある。
大宰帥大伴卿の故人を思ひ恋ふる歌三首は、神亀五年(728)に大宰府で妻の大伴郎女を亡くした旅人が、亡き妻を恋い慕って詠んだ一連である。
作者の大伴旅人は大伴安麻呂の子で、中納言、大宰帥を経て大納言に至り、天平三年(731)に没した。漢詩文の教養に富み、大宰帥として筑紫にあった時には、山上憶良らとともに歌の交流の中心となった。
初句「帰るべく」 都へ帰るべき、の意である。
二句「時はなりけり」 「けり」は気づきの詠嘆で、その時になったことだ、の意である。ここで句切れとなる。
三句「都にて」 都で、の意である。
四句「誰が手本をか」 手本は腕のことで、「か」は疑問の係助詞である。誰の腕を、の意で、結句の連体形と係り結びとなる。
結句「我が枕かむ」 「枕く」は枕にする意、「む」は推量で、私は枕にしようか、と妻のいない孤独を嘆いて結んでいる。
たもと:腕
まくらく:枕にする
- 作者
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大伴旅人
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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愛しき人のまきてし敷栲の 我が手枕をまく人あらめや
- 次の歌
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都なる荒れたる家にひとり寝ば 旅にまさりて苦しかるべし