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都なる荒れたる家にひとり寝ば
旅にまさりて苦しかるべし

歌の意味
都にある、主婦のいない荒れた家にひとりで寝たならば、旅にもまさって苦しいことだろう。
鑑賞
巻第三 挽歌 440

詞書は前の歌に続き「神亀五年戊辰、大宰帥大伴卿の故人を思ひ恋ふる歌三首」
 大宰帥大伴卿の故人を思ひ恋ふる歌三首の三首目で、一連を締めくくる歌である。都に帰っても、妻のいない荒れた家にひとりで寝るのは、旅にもまして苦しいだろうと、帰京後の孤独を予想して嘆いている。左注に、この二首は京へ向かう時が近づいて作った歌、とある。本巻の第四百五十一首は、実際に帰宅した時に「旅にまさりて苦しかりけり」と詠んでおり、ここでの予想がそのまま実感となっている。
 大宰帥大伴卿の故人を思ひ恋ふる歌三首は、神亀五年(728)に大宰府で妻の大伴郎女を亡くした旅人が、亡き妻を恋い慕って詠んだ一連である。
 作者の大伴旅人は大伴安麻呂の子で、中納言、大宰帥を経て大納言に至り、天平三年(731)に没した。漢詩文の教養に富み、大宰帥として筑紫にあった時には、山上憶良らとともに歌の交流の中心となった。

 初句「都なる」 都にある、の意である。
 二句「荒れたる家に」 妻のいない、手入れのされない荒れた家に、の意である。
 三句「ひとり寝ば」 ひとりで寝たならば、の意で、仮定条件である。
 四句「旅にまさりて」 旅にもまさって、の意である。本巻の第四百五十一首の四句と同じ句である。
 結句「苦しかるべし」 「べし」は推量で、苦しいことだろう、と帰京後の孤独を予想して結んでいる。

ある:荒れる、手入れされずに荒れ果てる
作者
大伴旅人
出典
万葉集
前の歌
帰るべく時はなりけり都にて 誰が手本をか我が枕かむ
次の歌
大君の命畏み大殯の 時にはあらねど雲隠ります