磯の上に根延ふむろの木見し人を
いづらと問はば語り告げむか
- 歌の意味
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磯の上に根を張っているむろの木よ、お前を見たあの人は今どこにいるのかと尋ねたら、語り告げてくれるだろうか。
- 鑑賞
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巻第三 挽歌 448
詞書は前の歌に続き「天平二年庚午冬十二月、大宰帥大伴卿の京に向かひて上道する時に作る歌五首」
帰京の途上で詠んだ五首の三首目である。磯に根を張るむろの木に呼びかけ、お前を見たあの人はどこにいるのかと尋ねたら教えてくれるだろうかと、答えるはずのない木に問いかけるほどの悲しみを詠んでいる。左注に、この三首は鞆の浦を過ぎる日に作った歌とあり、むろの木を詠んだ三首がここで結ばれている。
天平二年(730)の冬十二月、大納言に任じられて大宰府から都へ上る途中の旅人が、往路に亡き妻とともに見た鞆の浦と敏馬の崎の景を、ひとりで再び見て詠んだ一連である。
作者の大伴旅人は大伴安麻呂の子で、中納言、大宰帥を経て大納言に至り、天平三年(731)に没した。漢詩文の教養に富み、大宰帥として筑紫にあった時には、山上憶良らとともに歌の交流の中心となった。
初句「磯の上に」 磯の上に、の意で、六音の字余りである。
二句「根延ふむろの木」 「根延ふ」は根を長く張る意で、根を張っているむろの木よ、と呼びかけている。
三句「見し人を」 お前を見た人を、の意で、亡き妻を指している。
四句「いづらと問はば」 「いづら」はどこ、の意で、どこにいるかと尋ねたならば、の意である。
結句「語り告げむか」 「む」は推量、「か」は疑問で、語り告げてくれるだろうか、と結んでいる。
ねばふ:根を長く張る
- 作者
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大伴旅人
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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鞆の浦の磯のむろの木見むごとに 相見し妹は忘らえめやも
- 次の歌
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妹と来し敏馬の崎を帰るさに ひとりし見れば涙ぐましも