古典和歌stream

妹としてふたり作りし我が山斎は
木高く茂くなりにけるかも

歌の意味
妻と二人で作った私の庭は、しばらく見ないうちに、木が高く茂ってしまったことだ。
鑑賞
巻第三 挽歌 452

詞書は前の歌に続き「故郷の家に還り入りて即ち作る歌三首」
 帰宅して詠んだ三首の二首目である。妻と二人で作った庭は、筑紫にいた数年の間に木が高く生い茂っていたと、過ぎた年月と、ともに庭を作った妻の不在とを思っている。庭の木々の成長が、妻との別れからの時の流れを静かに示している。
 故郷の家に還り入りて即ち作る歌三首は、奈良の家に帰り着いた旅人が、妻のいない家や庭を見て悲しんだ一連である。題詞に作者名は記されないが、前の五首に続く旅人の作である。
 作者の大伴旅人は大伴安麻呂の子で、中納言、大宰帥を経て大納言に至り、天平三年(731)に没した。漢詩文の教養に富み、大宰帥として筑紫にあった時には、山上憶良らとともに歌の交流の中心となった。

 初句「妹として」 妻と一緒に、の意である。
 二句「ふたり作りし」 二人で作った、の意である。
 三句「我が山斎は」 山斎は泉水や築山のある庭園のことである。
 四句「木高く茂く」 木が高く茂って、の意である。
 結句「なりにけるかも」 「にける」は完了と過去、「かも」は詠嘆で、茂ってしまったことだ、と歳月への感慨で結んでいる。

しま:泉水や築山のある庭園
作者
大伴旅人
出典
万葉集
前の歌
人もなき空しき家は草枕 旅にまさりて苦しかりけり
次の歌
我妹子が植ゑし梅の木見るごとに 心咽せつつ涙し流る