妹が見しやどに花咲き時は経ぬ
我が泣く涙いまだ干なくに
- 歌の意味
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妻が見た庭に花が咲いて、時は過ぎてしまった。私の泣く涙はまだ乾かないのに。
- 鑑賞
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巻第三 挽歌 469
詞書は前の歌に続き「又家持の作る歌一首并せて短歌」の「反歌」
亡き妻を悼んだ長歌の反歌の三首目である。妻がかつて見た庭には花が咲き、季節は移ってしまったのに、自分の涙はまだ乾かないと、移りゆく時と変わらない悲しみとを対比している。花の咲く庭の景が、かえって妻の不在を際立たせている。
天平十一年(739)夏六月から秋にかけて、大伴家持が亡くなった妾を悼んで詠んだ一連の挽歌である。
作者の大伴家持は大伴旅人の子で、奈良時代の官人である。越中守、因幡守などを経て中納言に至り、延暦四年(785)に没した。万葉集の編纂に深く関わったとされる。
初句「妹が見し」 妻がかつて見た、の意である。
二句「やどに花咲き」 家の庭に花が咲いて、の意である。
三句「時は経ぬ」 「経」は時が過ぎる意、「ぬ」は完了で、時は過ぎてしまった、の意である。ここで句切れとなる。
四句「我が泣く涙」 私の泣く涙は、の意である。
結句「いまだ干なくに」 「干」は乾く意、「なくに」は打消のク語法に「に」がついた形で、まだ乾かないのに、と嘆きで結んでいる。
ふ:時が経つ
ひる:乾く
- 作者
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大伴家持
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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出でて行く道知らませばあらかじめ 妹を留めむ関も置かましを
- 次の歌
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かくのみにありけるものを妹も我れも 千年のごとく頼みたりけり