うつせみの世のことにあれば外に見し
山をや今はよすかと思はむ
- 歌の意味
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これもこの世の定めであるから、これまでよそごととして見ていた山を、今は妻をしのぶよすがと思おうか。
- 鑑賞
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巻第三 挽歌 482
詞書は前の歌に続き「死にし妻を悲傷する高橋朝臣の作る歌一首并せて短歌」の「反歌」
亡くなった妻を悼んだ長歌に添えられた反歌の一首目である。人が死ぬのもこの世の定めであるから、これまで関わりのないものとして見ていた山を、妻を葬った今は、妻をしのぶよりどころと思おうと詠んでいる。本巻の第四百七十四首の大伴家持の歌も、よそに見ていた佐保山が妻の墓所となっていとしくなったと詠んでおり、同じ心情が配列の上で呼応している。
左注には、この三首は天平十六年(744)の七月二十日に高橋朝臣が作った歌で、名は分からないが、奉膳の男子という、とある。
作者の高橋朝臣は、名が伝わらず、誰を指すかについて定説を見ない。朝臣は姓で、左注に奉膳の男子とあり、宮中の食膳をつかさどる内膳司の長官である奉膳の子とされる。
初句「うつせみの」 うつせみはこの世、現世のことで、「世」にかかる枕詞としても用いられる。
二句「世のことにあれば」 この世のことであるから、の意で、死もこの世の定めであることを示している。
三句「外に見し」 よそごととして見ていた、の意で、六音の字余りである。本巻の第四百七十四首の二句「外にも見しか」と響き合っている。
四句「山をや今は」 「や」は疑問の係助詞で、結句の連体形「む」と係り結びとなる。
結句「よすかと思はむ」 よすかはよりどころ、ゆかりのことで、妻をしのぶよりどころと思おうか、と結んでいる。
うつせみ:この世、現世
よすか:よりどころ、ゆかり
- 作者
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高橋朝臣
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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大伴の名に負ふ靫帯びて万代に 頼みし心いづくか寄せむ
- 次の歌
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朝鳥の哭のみし泣かむ我妹子に 今またさらに逢ふよしをなみ