一日こそ人も待ちよき長き日を
かくのみ待たば有りかつましじ
- 歌の意味
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一日ぐらいなら人を待つのもたやすいが、長い日々をこうして待ってばかりいるのなら、とても生きてはいられないだろう。
- 鑑賞
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巻第四 相聞 484
詞書「難波天皇の妹の、大和に在す皇兄に奉り上ぐる御歌一首」
巻第四の巻頭に置かれた相聞の歌である。一日だけなら待つこともできるが、幾日も待ち続けるばかりでは生きていけないと、大和にいる兄への思いを訴えている。詞書によれば、難波に都した天皇の妹が、大和にいる兄に贈った歌である。待つ身のつらさを短い言葉で率直に言い切った点に、古い時代の歌らしい力強さがある。
巻第二の巻頭の磐姫皇后の歌(巻第二の第八十五首)も、日数を重ねて待つ心を詠んでおり、本歌の「長き日」と通い合う。また本巻の巻末の第七百九十二首も「待つ」ことを詠んでおり、巻頭と巻末が「待つ」心で呼応している。
作者の難波天皇妹は、難波に宮を置いた天皇の妹を指す。難波天皇を仁徳天皇とする説と孝徳天皇とする説があり、誰を指すかについて定説を見ない。孝徳天皇とみる場合には、間人皇女が大和にいた中大兄皇子に贈った歌とする見方もある。
初句「一日こそ」は、係助詞「こそ」で一日という短い時間を強く取り立てる。のちの「長き日」との対比がここで準備される。
二句「人も待ちよき」は、人を待つのもたやすいの意で、「こそ」の結びとなる。上代には形容詞の已然形が未発達で、連体形で結ぶ古い形をとっている。ここで意味の上で切れる二句切れである。
三句「長き日を」の「日」は「け」と読み、日数、幾日もの間を表す。初句の「一日」と対になり、時間の長短を鮮やかに対比させている。
四句「かくのみ待たば」の「のみ」は限定の副助詞、「ば」は未然形について仮定を表す。このように待つばかりならばの意となる。
結句「有りかつましじ」の「かつ」は可能を表す補助動詞、「ましじ」は打消推量の助動詞で、とても生きてはいられないだろうの意である。本巻の第六百十首も同じ結句をもち、待つ苦しさを同じ言葉で言い表している。
け:日。複数の日、日数を表す上代語
ありかつ:生きながらえることができる。「かつ」は可能を表す
- 作者
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難波天皇妹
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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朝鳥の哭のみし泣かむ我妹子に 今またさらに逢ふよしをなみ
- 次の歌
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山の端にあぢ群騒き行くなれど 我れは寂しゑ君にしあらねば