今のみのわざにはあらずいにしへの
人ぞまさりて音にさへ泣きし
- 歌の意味
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恋に苦しむのは今の世だけのことではない。昔の人のほうがまさって、声をあげてまで泣いたのだ。
- 鑑賞
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巻第四 相聞 498
詞書は前の歌に続き「柿本朝臣人麻呂の歌四首」
前歌の問いに自ら答えるように置かれた歌で、恋に苦しむのは今に始まったことではなく、昔の人はもっと激しく、声をあげて泣いたのだと詠む。自分の嘆きを古人の嘆きと重ね合わせることで、恋の苦しみを慰めようとする心がうかがえる。前歌の「いにしへにありけむ人」と本歌の「いにしへの人」とが呼応し、問いと答えの形で二首が一組になっている。
作者の柿本人麻呂は、持統天皇、文武天皇の時代に活躍した宮廷歌人で、長歌、短歌ともにすぐれ、後世に歌聖と仰がれた。
初句「今のみの」は、今だけのの意で、「のみ」は限定の副助詞である。
二句「わざにはあらず」は、行いではないの意である。恋に泣くことが今の世に限らないと打ち消し、ここで切れる二句切れとなる。
三句「いにしへの」は、前歌の初句「いにしへに」と同じ語を用い、二首を問いと答えの関係で結びつけている。
四句「人ぞまさりて」は、係助詞「ぞ」で昔の人を取り立て、今の自分よりまさっての意を表す。結びは結句の「し」である。
結句「音にさへ泣きし」の「音に泣く」は声をあげて泣くの意、「さへ」は添加を表す。「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、「ぞ」の結びとなる。
わざ:行い、しわざ
ね:泣く声
- 作者
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柿本人麻呂
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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いにしへにありけむ人も我がごとか 妹に恋ひつつ寐ねかてずけむ
- 次の歌
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百重にも来及かぬかもと思へかも 君が使の見れど飽かずあらむ