我が背子は物な思ひそ事しあらば
火にも水にも我れなけなくに
- 歌の意味
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あなたは思い悩まないでください。何か事が起こったら、火の中にも水の中にも、私がいないわけではないのだから。
- 鑑賞
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巻第四 相聞 506
詞書は前の歌に続き「安倍女郎の歌二首」
思い悩む恋人を励まし、何か事が起これば火の中にも水の中にも共に飛び込む私がいるのだからと言い切る歌である。困難に際して共に立ち向かう決意を「火にも水にも」という力強い言葉で表しており、女性の情熱的な一面がうかがえる。前歌の揺るぎない心を受け、本歌ではそれを行動の決意として示している。
作者の安倍女郎は、奈良時代初めごろの女性歌人で、阿倍氏の出身とみられるが、伝は未詳である。
初句「我が背子は」は、あなたはと恋人に呼びかける言葉である。
二句「物な思ひそ」の「な〜そ」は禁止を表し、思い悩まないでくださいの意となる。ここで切れる二句切れである。
三句「事しあらば」の「し」は強意の副助詞、「ば」は未然形について仮定を表し、何か事が起こったならばの意となる。
四句「火にも水にも」は、火の中にも水の中にもの意で、どんな困難の中にもという決意を具体的な言葉で示す。
結句「我れなけなくに」の「なけなく」は「なし」の未然形「なけ」に打消の「なく」がついた形で、私がいないわけではないのにの意である。二重否定によって、必ず私がいるという強い肯定を表している。
こと:出来事。とくに身に起こる困った事態
- 作者
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安倍女郎
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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今さらに何をか思はむうち靡き 心は君に寄りにしものを
- 次の歌
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敷栲の枕ゆくくる涙にぞ 浮寝をしける恋の繁きに