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ひとり寝て絶えにし紐をゆゆしみと
為むすべ知らに音のみしぞ泣く

歌の意味
ひとり寝をしていて切れてしまった紐を不吉に思い、どうしてよいかもわからず、声をあげて泣くばかりだ。
鑑賞
巻第四 相聞 515

詞書「中臣朝臣東人の阿倍女郎に贈る歌一首」
 ひとり寝の間に衣の紐が切れたことを不吉な前兆と恐れ、どうしてよいかわからず泣くばかりだと阿倍女郎に訴える歌である。当時、男女が互いに結び合った紐が切れるのは、相手の心変わりや不幸のしるしと考えられていた。前歌の衣の縫い目を受けるように衣にかかわる「紐」を詠み、次歌の阿倍女郎の答えを引き出している。
 作者の中臣東人は、奈良時代の官人で、中臣意美麻呂の子とされる。

 初句「ひとり寝て」は、ひとりで寝ていての意で、恋人と離れている寂しさを示す。
 二句「絶えにし紐を」は、切れてしまった紐をの意である。「に」は完了、「し」は過去の助動詞で、恋人と結び合った紐の切れたことを表す。
 三句「ゆゆしみと」は、形容詞「ゆゆし」の語幹に「み」がついた形で、不吉に思っての意となる。紐が切れたことを凶兆と受け止めている。
 四句「為むすべ知らに」の「に」は打消の助動詞「ず」の古い連用形で、どうしてよいかわからずにの意となる。
 結句「音のみしぞ泣く」の「音のみ泣く」は声をあげて泣くばかりの意で、「し」「ぞ」が重ねて強める。「ぞ」の結びとして「泣く」の連体形で結ぶ。

ひも:衣の紐。男女が別れる際に互いに結び合い、再会まで解かない習わしがあった
作者
中臣東人
出典
万葉集
前の歌
我が背子が着せる衣の針目おちず 入りにけらしも我が心さへ
次の歌
我が持てる三相に搓れる糸もちて 付けてましもの今ぞ悔しき