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よく渡る人は年にもありといふを
いつの間にぞも我が恋ひにける

歌の意味
恋に耐えることの上手な人は、一年でも逢わずに過ごすというのに、いつの間に私はこれほど恋しく思うようになってしまったのだろうか。
鑑賞
巻第四 相聞 523

詞書は前の歌に続き「京職藤原大夫の大伴郎女に贈る歌三首」
 恋に耐えることの上手な人は一年でも逢わずに過ごすというのに、自分はいつの間にかこれほど恋い焦がれるようになってしまったと詠む歌である。一年に一度だけ逢う七夕の二星を念頭に置いたものとも解され、わずかな間も待てない自らの恋心の激しさを、驚きをこめて述べている。
 作者の藤原麻呂は、藤原不比等の四男で、藤原京家の祖となった。京職の長官を務めたことから、詞書では京職藤原大夫と呼ばれている。

 初句「よく渡る」は、上手に恋の日々を過ごすの意で、「渡る」は時を過ごすことをいう。
 二句「人は年にも」は、人は一年でもの意で、長い間逢わずにいられる人を示す。
 三句「ありといふを」は、過ごすというのにの意で、「を」は逆接の接続助詞である。
 四句「いつの間にぞも」は、いつの間にの意で、係助詞「ぞ」と「も」が重なって驚きを強める。結びは結句の「ける」である。
 結句「我が恋ひにける」の「に」は完了、「ける」は「ぞ」の結びの連体形で、恋しく思うようになってしまったことだの意となる。

わたる:時を過ごす。年月を送る
作者
藤原麻呂
出典
万葉集
前の歌
娘子らが玉櫛笥なる玉櫛の 神さびけむも妹に逢はずあれば
次の歌
むし衾なごやが下に伏せれども 妹とし寝ねば肌し寒しも