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千鳥鳴く佐保の川瀬のさざれ波
やむ時もなし我が恋ふらくは

歌の意味
千鳥の鳴く佐保川の瀬に立つさざ波のように、やむ時もない。私があなたを恋しく思う心は。
鑑賞
巻第四 相聞 526

詞書は前の歌に続き「大伴郎女の和ふる歌四首」
 千鳥の鳴く佐保川の瀬のさざ波を序として、あなたを恋う心はやむ時もないと詠む歌である。絶え間なく立つさざ波に、途切れることのない恋心を重ねている。前歌と同じく佐保川を詠み、郎女の住む佐保の景物によって答歌をまとめている。
 左注によれば、郎女は佐保大納言大伴安麻呂の娘で、はじめ穂積皇子に嫁いで寵愛を受け、皇子の没後に藤原麻呂に求婚された。坂上の里に住んだことから坂上郎女と呼ばれた。
 作者の大伴坂上郎女は、大伴安麻呂の娘で、大伴旅人の異母妹にあたる。万葉集に多くの歌を残し、女流歌人として重んじられている。

 初句「千鳥鳴く」は、佐保川に千鳥が多かったことから「佐保」を修飾する語である。本巻の第五百二十八首も同じ「千鳥鳴く佐保の」の句で歌い出しており、一連の中で同じ句が繰り返されている。
 二句「佐保の川瀬の」は、佐保川の浅瀬のの意で、前歌の「佐保川」を受けている。
 三句「さざれ波」は細かく立つ小さな波で、初句からここまでが四句の「やむ時もなし」を導く序詞となる。
 四句「やむ時もなし」は、やむ時もないの意で、さざ波の絶え間なさを恋心に転じる。ここで切れる四句切れである。
 結句「我が恋ふらくは」の「恋ふらく」は「恋ふ」のク語法で、私が恋い慕うことはの意となる。倒置によって主題を最後に示している。

さざれなみ:細かく立つ小さな波
ちどり:水辺にすむ小形の鳥。群れて鳴く
作者
大伴坂上郎女
出典
万葉集
前の歌
佐保川の小石踏み渡りぬばたまの 黒馬来る夜は年にもあらぬか
次の歌
来むと言ふも来ぬ時あるを来じと言ふを 来むとは待たじ来じと言ふものを