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この世には人言繁し来む世にも
逢はむ我が背子今ならずとも

歌の意味
この世では人の噂がうるさい。来世でも逢いましょう、あなた。今でなくても。
鑑賞
巻第四 相聞 541

詞書は前の歌に続き「高田女王の今城王に贈る歌六首」
 この世では人の噂がうるさいので、今でなくても来世で逢いましょうと呼びかける歌である。来世という仏教的な考え方を取り入れた点が注目され、恋の障害を超えようとする強い思いが表れている。
 作者の高田女王は、高安王の娘とされる女性である。贈った相手の今城王は大伴女郎の子で、のちに大原真人の姓を賜った。

 初句「この世には」は、現世ではの意で、三句の「来む世」と対をなす。
 二句「人言繁し」は、人の噂がうるさいの意で、ここで切れる二句切れである。
 三句「来む世にも」は、来世でもの意である。仏教の来世観を背景に、この世を超えた逢瀬を思い描いている。
 四句「逢はむ我が背子」の「む」は意志を表し、逢いましょう、あなたと呼びかける。ここで切れる四句切れである。
 結句「今ならずとも」は、今でなくてもの意で、倒置によって条件を示す。本巻の第六百九十九首の結句「今にあらずとも」と通う表現である。

こむよ:来世
作者
高田女王
出典
万葉集
前の歌
我が背子にまたは逢はじかと思へばか 今朝の別れのすべなかりつる
次の歌
常やまず通ひし君が使ひ来ず 今は逢はじとたゆたひぬらし