思はぬを思ふと言はば大野なる
御笠の杜の神し知らさむ
- 歌の意味
-
思ってもいないのに思っていると言ったならば、大野にある御笠の杜の神がお見通しになるだろう。
- 鑑賞
-
巻第四 相聞 561
詞書は前の歌に続き「大宰大監大伴宿祢百代の恋の歌四首」
思ってもいないのに思っていると偽るならば、大野の御笠の杜の神が見抜かれるだろうと、自分の恋心に偽りのないことを神にかけて誓う歌である。大宰府近くの神を持ち出すことで、誓いを具体的で重いものにしている。本巻の第六百五十五首も同じ上二句「思はぬを思ふと言はば」をもち、同じ誓いの言葉が別の歌にも用いられている。
作者の大伴百代は、大伴氏の官人で、大宰大監として大伴旅人のもとに仕えた。
初句「思はぬを」は、思ってもいないのにの意で、「を」は逆接の接続助詞である。
二句「思ふと言はば」は、思っていると言ったならばの意で、「ば」は仮定を表す。
三句「大野なる」は、筑前国の大野で、大宰府の北の大野山一帯を指す。「なる」は「にある」のつづまった形である。
四句「御笠の杜の」は、大野にあった御笠の森で、神の宿る森とされた。
結句「神し知らさむ」の「し」は強意、「知らす」は「知る」の尊敬語で、神がお見通しになるだろうの意となる。
もり:神の宿る森、神社の森
- 作者
-
大伴百代
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
恋ひ死なむ後は何せむ生ける日の ためこそ妹を見まく欲りすれ
- 次の歌
-
暇なく人の眉根をいたづらに 掻かしめつつも逢はぬ妹かも