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韓人の衣染むといふ紫の
心に染みて思ほゆるかも

歌の意味
韓人が衣を染めるという紫の色のように、心に深く染みて思われることだ。
鑑賞
巻第四 相聞 569

詞書は前の歌に続き「大宰帥大伴卿の大納言に任ぜられて、京に入る時に臨みて、府の官人らの卿を筑前国の蘆城の駅家に餞する歌四首」
 送別の四首の二首目で、韓人が衣を染めるという紫の色を序として、旅人への思いが心に深く染み込んでいると詠む。高貴な紫の色を用いて、旅人への敬慕の深さを表している。
 左注によれば、本歌と次歌は大典麻田陽春の作である。
 作者の麻田陽春は、百済系の渡来人の子孫とされる官人で、大宰府の大典を務めた。

 初句「韓人の」は、朝鮮半島から渡来した人のの意である。紫染めの技術が渡来人によって伝えられたことをふまえている。
 二句「衣染むといふ」は八音の字余りで、衣を染めるというの意で、伝え聞いたことを示す。
 三句「紫の」は、紫草の根で染めた色で、高貴な色とされた。初句からここまでが四句の「染みて」を導く序詞となる。
 四句「心に染みて」は、心に深く染み込んでの意で、序詞の「染む」を受けている。
 結句「思ほゆるかも」は、思われることだの意で、「かも」は詠嘆である。

からひと:朝鮮半島や中国から渡来した人
むらさき:紫草。またその根で染めた色
作者
麻田陽春
出典
万葉集
前の歌
み崎廻の荒磯に寄する五百重波 立ちても居ても我が思へる君
次の歌
大和へに君が発つ日の近づけば 野に立つ鹿も響めてぞ鳴く