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大和へに君が発つ日の近づけば
野に立つ鹿も響めてぞ鳴く

歌の意味
大和へとあなたが旅立つ日が近づいたので、野に立つ鹿までも声を響かせて鳴いている。
鑑賞
巻第四 相聞 570

詞書は前の歌に続き「大宰帥大伴卿の大納言に任ぜられて、京に入る時に臨みて、府の官人らの卿を筑前国の蘆城の駅家に餞する歌四首」
 送別の四首の三首目で、旅人が大和へ旅立つ日が近づくと、野の鹿までも声を響かせて鳴いていると詠む。別れを悲しむ心を鹿の鳴き声に託し、自然までもが別れを惜しんでいるかのように表している。
 左注によれば、本歌と前歌は大典麻田陽春の作である。
 作者の麻田陽春は、百済系の渡来人の子孫とされる官人で、大宰府の大典を務めた。

 初句「大和へに」は、大和の方への意で、旅人の帰る先を示す。
 二句「君が発つ日の」は、あなたが旅立つ日がの意である。四句の「立つ」と同じ音を重ねている。
 三句「近づけば」は、近づいたのでの意で、「ば」は已然形について確定条件を表す。
 四句「野に立つ鹿も」は、野に立っている鹿までもの意である。二句の「発つ」と「立つ」を響き合わせている。
 結句「響めてぞ鳴く」の「響む」は声を響かせるの意で、「ぞ」の結びとして連体形「鳴く」で結ぶ。

とよむ:声や音を響かせる
作者
麻田陽春
出典
万葉集
前の歌
韓人の衣染むといふ紫の 心に染みて思ほゆるかも
次の歌
月夜よし川の音清しいざここに 行くも行かぬも遊びて行かむ