我が思ひを人に知るれか玉櫛笥
開きあけつと夢にし見ゆる
- 歌の意味
-
私の思いが人に知られてしまったのだろうか。櫛箱を開けてしまったと夢に見えることだ。
- 鑑賞
-
巻第四 相聞 591
詞書は前の歌に続き「笠女郎の大伴宿祢家持に贈る歌二十四首」
櫛箱を開けてしまう夢を見たことから、自分の恋心が人に知られてしまったのではないかと恐れる歌である。秘めていた箱を開ける夢を、隠していた恋が露見する前兆と受け止めている。前歌の、名を明かすなという願いに続き、恋が知られることへの不安を詠んでいる。
作者の笠女郎は、奈良時代の女流歌人で、大伴家持に多くの恋の歌を贈った。伝は未詳である。
初句「我が思ひを」は六音の字余りで、私の思いをの意である。
二句「人に知るれか」の「知る」は知られるの意の下二段動詞、「か」は疑問の係助詞で、人に知られてしまったのだろうかの意となる。ここで切れる二句切れである。
三句「玉櫛笥」は櫛などを入れる箱の美称で、「開く」「明く」などにかかる枕詞である。
四句「開きあけつと」は、開けてしまったとの意で、「つ」は完了の助動詞である。
結句「夢にし見ゆる」の「し」は強意で、夢に見えることだの意となる。連体形で結び、余韻を残している。
たまくしげ:櫛などを入れる箱の美称
- 作者
-
笠女郎
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
あらたまの年の経ぬれば今しはと ゆめよ我が背子我が名告らすな
- 次の歌
-
闇の夜に鳴くなる鶴の外のみに 聞きつつかあらむ逢ふとはなしに