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近くあれば見ねどもあるをいや遠く
君がいまさば有りかつましじ

歌の意味
近くにいるので逢わなくても過ごしていられたのに、いっそう遠くにあなたがいらっしゃるようになったら、とても生きていられないだろう。
鑑賞
巻第四 相聞 610

詞書は前の歌に続き「笠女郎の大伴宿祢家持に贈る歌二十四首」
 二十四首の最後の歌である。近くにいたから逢わなくても耐えられたが、さらに遠く離れてしまえば生きていられないだろうと、別れの悲しみを訴えて一連を閉じる。結句「有りかつましじ」は本巻の巻頭の第四百八十四首と同じ結句であり、待つ身の苦しみを言う同じ言葉が巻頭と響き合っている。
 作者の笠女郎は、奈良時代の女流歌人で、大伴家持に多くの恋の歌を贈った。伝は未詳である。

 初句「近くあれば」は六音の字余りで、近くにいるのでの意である。
 二句「見ねどもあるを」は、逢わなくても過ごしていられるのにの意で、「を」は逆接の接続助詞である。
 三句「いや遠く」は、ますます遠くの意である。
 四句「君がいまさば」の「います」は「あり」「行く」の尊敬語、「ば」は仮定で、あなたがいらっしゃるならばの意となる。
 結句「有りかつましじ」は、とても生きていられないだろうの意で、巻頭の第四百八十四首と同じ結句である。

います:「あり」「居る」「行く」の尊敬語
作者
笠女郎
出典
万葉集
前の歌
心ゆも我は思はずきまたさらに 我が故郷に帰り来むとは
次の歌
今さらに妹に逢はめやと思へかも ここだ我が胸いぶせくあるらむ