なかなかに黙もあらましを何すとか
相見そめけむ遂げざらまくに
- 歌の意味
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いっそのこと黙っていればよかったのに、どうして逢いはじめてしまったのだろう。遂げることもできないだろうに。
- 鑑賞
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巻第四 相聞 612
詞書は前の歌に続き「大伴宿祢家持の和ふる歌二首」
二首の二首目で、いっそ黙っていればよかった、遂げられもしない恋なのに、どうして逢いはじめたのだろうと悔やむ歌である。笠女郎との恋を終わらせようとする心が表れており、一連の贈答を閉じる歌となっている。
作者の大伴家持は、大伴旅人の子で、万葉集の編纂に深くかかわったとされる歌人である。のちに中納言に至った。
初句「なかなかに」は、かえって、いっそのことの意である。
二句「黙もあらましを」は八音の字余りで、「黙」は黙っていること、「まし」は反実仮想で、黙っていればよかったのにの意となる。
三句「何すとか」は、どうしての意で、「か」は疑問の係助詞、結びは四句の「けむ」である。
四句「相見そめけむ」は、逢いはじめたのだろうかの意で、「けむ」は過去推量の連体形として「か」の結びとなる。
結句「遂げざらまくに」の「遂げざらまく」は「遂げざらむ」のク語法で、遂げることもできないだろうにの意となる。倒置によって後悔の理由を示している。
もだ:黙っていること
あひみそむ:逢いはじめる、契りを結びはじめる
- 作者
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大伴家持
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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今さらに妹に逢はめやと思へかも ここだ我が胸いぶせくあるらむ
- 次の歌
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もの思ふと人に見えじとなまじひに 常に思へりありぞかねつる