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剣太刀名の惜しけくも我れはなし
君に逢はずて年の経ぬれば

歌の意味
名が惜しいということも、私にはもうない。あなたに逢わないまま年が経ってしまったので。
鑑賞
巻第四 相聞 616

詞書は前の歌に続き「山口女王の大伴宿祢家持に贈る歌五首」
 あなたに逢えないまま年月が経ってしまったので、もはや自分の評判が傷つくことも惜しくはないと詠む歌である。噂を恐れてきた恋を、ついには名を捨てても構わないという思いへと転じた、激しい決意の歌である。本巻の第七百三十二首の大伴家持の歌も同じ「名の惜しけくも我れはなし」の句をもち、名を惜しまぬ恋の言葉が響き合っている。
 作者の山口女王は、伝未詳の女性である。大伴家持と恋の歌を交わした女性の一人とみられる。

 初句「剣太刀」は、刃を意味する「な」から「名」にかかる枕詞である。
 二句「名の惜しけくも」の「惜しけく」は「惜し」のク語法で、名が惜しいということもの意となる。
 三句「我れはなし」は、私にはないの意で、ここで切れる三句切れである。
 四句「君に逢はずて」は、あなたに逢わないでの意である。
 結句「年の経ぬれば」は、年が経ってしまったのでの意で、倒置によって理由を示している。

な:名。評判、うわさ
作者
山口女王
出典
万葉集
前の歌
我が背子は相思はずとも敷栲の 君が枕は夢に見えこそ
次の歌
葦辺より満ち来る潮のいや増しに 思へか君が忘れかねつる