ここだくも思ひけめかも敷栲の
枕片さる夢に見え来し
- 歌の意味
-
あなたがそれほどまで私を思っていたからだろうか、枕の片側を空けて一人寝する私の夢に、あなたが見えたのは。
- 鑑賞
-
巻第四 相聞 633
詞書「娘子の報へ贈る歌二首」
湯原王に答えた娘子の二首の最初の歌である。枕の片側を空けて一人寝する私の夢にあなたが見えたのは、それほど私を思っていたからだろうかと返す。前の恨みの歌に対し、夢に見えたことを相手の思いのしるしとして受け止め、やわらかく応じている。
作者は、湯原王と歌を交わした女性で、名は伝わらない。
初句「ここだくも」は、これほどまでにの意である。
二句「思ひけめかも」の「けめ」は過去推量の助動詞「けむ」の已然形で、「かも」がついて、思っていたからだろうかの意となる。結びは結句の「し」である。
三句「敷栲の」は「枕」にかかる枕詞である。
四句「枕片さる」は、枕の片側を空けて寝るの意で、独り寝を表す。
結句「夢に見え来し」は、夢に見えたの意で、「し」は過去の助動詞「き」の連体形として「かも」の結びとなる。
かたさる:片側に寄る、片側を空ける
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
目には見て手には取らえぬ月の内の 楓のごとき妹をいかにせむ
- 次の歌
-
家にして見れど飽かぬを草枕 旅にも妻とあるが羨しさ