我が背子が形見の衣妻どひに
我が身は離けじ言とはずとも
- 歌の意味
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あなたの形見の衣を、妻問いのしるしとして、私の身から離すまい。たとえ衣が物を言わなくても。
- 鑑賞
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巻第四 相聞 637
詞書「娘子のまた報へ贈る歌一首」
前歌で湯原王から形見の衣を贈られた娘子が答えた歌である。その衣を妻問いのしるしとして肌身離さず持っていよう、衣は物を言わなくてもと詠む。衣をあなた自身と思って大切にするという、いじらしい心が表れている。
作者は、湯原王と歌を交わした女性で、名は伝わらない。
初句「我が背子が」は、あなたのの意である。
二句「形見の衣」は、形見の衣の意で、前歌の「我が衣形見に奉る」を受けている。
三句「妻どひに」は、妻問いのしるしとしての意である。「妻どひ」は男性が女性のもとへ通って求婚することをいう。
四句「我が身は離けじ」の「じ」は打消意志で、私の身から離すまいの意となる。ここで切れる四句切れである。
結句「言とはずとも」は、物を言わなくてもの意で、衣が恋人のように語りかけてはくれないことを嘆きつつ結ぶ。
つまどひ:男性が女性のもとへ通って求婚すること
こととふ:物を言う、話しかける
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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我が衣形見に奉る敷栲の 枕を放けずまきてさ寝ませ
- 次の歌
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ただ一夜隔てしからにあらたまの 月か経ぬると心惑ひぬ