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ただ一夜隔てしからにあらたまの
月か経ぬると心惑ひぬ

歌の意味
ただ一晩逢わずに隔てただけなのに、ひと月も経ってしまったのかと心が乱れてしまった。
鑑賞
巻第四 相聞 638

詞書「湯原王のまた贈る歌一首」
 たった一夜逢わなかっただけなのに、ひと月も経ったかと心が乱れたと、逢えない時間の長さを誇張して詠む歌である。恋する者にとっての時間の感覚を巧みにとらえている。
 作者の湯原王は、志貴皇子の子で、奈良時代の歌人である。清新な歌風で知られる。

 初句「ただ一夜」は、ただ一晩の意である。
 二句「隔てしからに」の「からに」は「〜だけで」の意で、隔てただけでの意となる。
 三句「あらたまの」は「月」「年」にかかる枕詞である。
 四句「月か経ぬると」の「か」は疑問を表し、ひと月も経ってしまったのかとの意となる。
 結句「心惑ひぬ」の「ぬ」は完了で、心が乱れてしまったの意となる。

まどふ:心が乱れる、迷う
作者
湯原王
出典
万葉集
前の歌
我が背子が形見の衣妻どひに 我が身は離けじ言とはずとも
次の歌
我が背子がかく恋ふれこそぬばたまの 夢に見えつつ寐ねらえずけれ