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白栲の袖別るべき日を近み
心にむせひ音のみし泣かゆ

歌の意味
袖を分かって別れなければならない日が近いので、心にむせび、声をあげて泣けてくるばかりだ。
鑑賞
巻第四 相聞 645

詞書は前の歌に続き「紀女郎の怨恨の歌三首」
 三首の最後の歌で、別れの日が近いので、心の中でむせび、声をあげて泣けてくると詠む。三首を通じて、夫との別れを迎える女性の悲しみがしだいに深まっていく。
 作者の紀女郎は、紀鹿人の娘で、名を小鹿といい、安貴王の妻であった。

 初句「白栲の」は「袖」にかかる枕詞である。
 二句「袖別るべき」は、袖を分かって別れなければならないの意である。
 三句「日を近み」は、日が近いのでの意で、「〜を〜み」で理由を表す。
 四句「心にむせひ」は、心の中でむせんでの意である。
 結句「音のみし泣かゆ」の「ゆ」は自発の助動詞で、声をあげて泣けてくるばかりだの意となる。

むせふ:むせぶ。胸がつまって泣く
作者
紀女郎
出典
万葉集
前の歌
今は我はわびぞしにける息の緒に 思ひし君をゆるさく思へば
次の歌
ますらをの思ひわびつつたびまねく 嘆く嘆きを負はぬものかも