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心には忘れぬものをたまさかに
見ぬ日さまねく月ぞ経にける

歌の意味
心の中では忘れはしないのに、たまたま逢わない日が重なって、ひと月も経ってしまった。
鑑賞
巻第四 相聞 653

詞書「大伴宿祢駿河麻呂の歌三首」
 心では忘れていないのに、たまたま逢わない日が重なってひと月も経ってしまったと、無沙汰を弁解する歌である。本巻の第六百四十七首の坂上郎女の歌と同じく「心には」と歌い出しており、贈答の応じ合いがうかがえる。
 作者の大伴駿河麻呂は、大伴御行の孫とされる官人で、坂上郎女の娘の坂上二嬢の夫となった。

 初句「心には」は、心の中ではの意で、第六百四十七首と同じ歌い出しである。
 二句「忘れぬものを」は、忘れないのにの意で、「ものを」は逆接を表す。
 三句「たまさかに」は、たまたまの意である。
 四句「見ぬ日さまねく」は、逢わない日が多く重なっての意である。
 結句「月ぞ経にける」は、ひと月も経ってしまったの意で、「ぞ」を受けて連体形「ける」で結ぶ。

ふ:時が経つ、過ぎる
作者
大伴駿河麻呂
出典
万葉集
前の歌
玉守に玉は授けてかつがつも 枕と我れはいざふたり寝む
次の歌
相見ては月も経なくに恋ふと言はば をそろと我れを思ほさむかも