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我れのみぞ君には恋ふる我が背子が
恋ふといふことは言のなぐさぞ

歌の意味
私だけがあなたを恋しく思っているのだ。あなたが恋しいと言うのは、ただの口先の慰めにすぎない。
鑑賞
巻第四 相聞 656

詞書「大伴坂上郎女の歌六首」
 坂上郎女の歌六首の最初の歌である。恋しく思っているのは私だけで、あなたが恋しいと言うのは口先だけの慰めにすぎないと、相手の言葉の誠実さを疑う。強い調子で相手を責めながら、自らの思いの深さを示している。
 作者の大伴坂上郎女は、大伴安麻呂の娘で、大伴旅人の異母妹にあたる。万葉集に多くの歌を残し、女流歌人として重んじられている。

 初句「我れのみぞ」は、私だけがの意で、「ぞ」の結びは二句の「恋ふる」である。
 二句「君には恋ふる」は、あなたを恋しく思っているの意で、ここで切れる二句切れである。
 三句「我が背子が」は、あなたがの意である。
 四句「恋ふといふことは」は八音の字余りで、恋しいと言うことはの意である。
 結句「言のなぐさぞ」は、口先だけの慰めだの意で、言い切って結ぶ。

なぐさ:慰め、気晴らし
作者
大伴坂上郎女
出典
万葉集
前の歌
相見ては月も経なくに恋ふと言はば をそろと我れを思ほさむかも
次の歌
思はじと言ひてしものをはねず色の うつろひやすき我が心かも