思へども験もなしと知るものを
何かここだく我が恋ひわたる
- 歌の意味
-
いくら思っても甲斐がないとわかっているのに、どうしてこれほどまでに私は恋い続けているのだろう。
- 鑑賞
-
巻第四 相聞 658
詞書は前の歌に続き「大伴坂上郎女の歌六首」
思っても甲斐がないとわかっていながら、なぜこれほど恋い続けるのかと、自らの心をいぶかる歌である。理性ではわかっていても止められない恋の不思議さを見つめている。本巻の第六百七十二首の安倍虫麻呂の歌も同じ下の句「何かここだく我が恋ひわたる」をもち、同じ嘆きの言葉が別の作者の歌で繰り返されている。
作者の大伴坂上郎女は、大伴安麻呂の娘で、大伴旅人の異母妹にあたる。万葉集に多くの歌を残し、女流歌人として重んじられている。
初句「思へども」は、思ってもの意で、「ども」は逆接である。
二句「験もなしと」は、甲斐もないとの意である。
三句「知るものを」は、わかっているのにの意である。
四句「何かここだく」の「か」は疑問の係助詞、「ここだく」はこれほどまでにの意で、結びは結句の連体形である。第六百七十二首の四句と同じ句である。
結句「我が恋ひわたる」は、私は恋い続けているのかの意で、連体形で結ぶ。
しるし:効き目、甲斐
- 作者
-
大伴坂上郎女
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
思はじと言ひてしものをはねず色の うつろひやすき我が心かも
- 次の歌
-
あらかじめ人言繁しかくしあらば しゑや我が背子奥もいかにあらめ