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まそ鏡磨ぎし心をゆるしてば
後に言ふとも験あらめやも

歌の意味
澄んだ鏡を磨くように研ぎ澄ましてきた心を、許してしまったならば、後で何を言っても甲斐があろうか。
鑑賞
巻第四 相聞 673

詞書「大伴坂上郎女の歌二首」
 固く守ってきた心を相手に許してしまえば、後で何を言っても甲斐はないと、慎重に自らの心を戒める歌である。恋に身をまかせることへのためらいが表れている。
 作者の大伴坂上郎女は、大伴安麻呂の娘で、大伴旅人の異母妹にあたる。万葉集に多くの歌を残し、女流歌人として重んじられている。

 初句「まそ鏡」は、よく澄んだ鏡の意で、鏡を磨くことから「磨ぐ」にかかる枕詞である。
 二句「磨ぎし心を」は、研ぎ澄ましてきた心をの意で、固く守ってきた心を表す。
 三句「ゆるしてば」の「て」は完了の助動詞「つ」の未然形、「ば」は仮定で、許してしまったならばの意となる。
 四句「後に言ふとも」は、後で何を言ってもの意である。
 結句「験あらめやも」の「めやも」は反語で、甲斐があろうか、いやないの意となる。

とぐ:研ぐ、磨く
作者
大伴坂上郎女
出典
万葉集
前の歌
しつたまき数にもあらぬ命もて 何かここだく我が恋ひわたる
次の歌
真玉つくをちこち兼ねて言は言へど 逢ひて後こそ悔にはありといへ