古典和歌stream

思ふらむ人にあらなくにねもころに
心尽して恋ふる我れかも

歌の意味
私を思ってくれているような人でもないのに、心を込めて、心を尽くして恋い慕う私であることよ。
鑑賞
巻第四 相聞 682

詞書は前の歌に続き「大伴宿祢家持の交遊と別るる歌三首」
 三首の最後の歌で、自分を思ってくれてもいない人を心を尽くして慕う自分を、自嘲気味に詠む。友との別れの一連を、報われぬ思いの嘆きで結んでいる。
 作者の大伴家持は、大伴旅人の子で、万葉集の編纂に深くかかわったとされる歌人である。のちに中納言に至った。

 初句「思ふらむ」は、思っているであろうの意である。
 二句「人にあらなくに」は八音の字余りで、人ではないのにの意である。
 三句「ねもころに」は、心を込めて、懇ろにの意である。
 四句「心尽して」は、心を尽くしての意である。
 結句「恋ふる我れかも」は、恋い慕う私であることよの意で、「かも」は詠嘆である。

つくす:尽くす、ありったけを出す
作者
大伴家持
出典
万葉集
前の歌
なかなかに絶ゆとし言はばかくばかり 息の緒にして我れ恋ひめやも
次の歌
言ふ言の畏き国ぞ紅の 色にな出でそ思ひ死ぬとも