今は我は死なむよ我が背生けりとも
我れに依るべしと言ふといはなくに
- 歌の意味
-
もう私は死んでしまおう、あなた。生きていても、あなたが私に心を寄せてくれると言うわけでもないのだから。
- 鑑賞
-
巻第四 相聞 684
詞書は前の歌に続き「大伴坂上郎女の歌七首」
生きていてもあなたが心を寄せてくれるわけでもないのだから、もう死んでしまおうと、激しい恨みを込めて訴える歌である。本巻の第六百四十四首の紀女郎の歌と同じく「今は我は」と歌い出しており、恋の絶望を言う言葉が響き合っている。
作者の大伴坂上郎女は、大伴安麻呂の娘で、大伴旅人の異母妹にあたる。万葉集に多くの歌を残し、女流歌人として重んじられている。
初句「今は我は」は六音の字余りで、今となっては私はの意である。第六百四十四首と同じ歌い出しである。
二句「死なむよ我が背」は、死んでしまおう、あなたの意で、ここで切れる二句切れである。
三句「生けりとも」は、生きていてもの意である。
四句「我れに依るべしと」は八音の字余りで、私に心を寄せるはずだとの意である。
結句「言ふといはなくに」は八音の字余りで、言うとは言わないのにの意となる。
よる:心を寄せる、頼る
- 作者
-
大伴坂上郎女
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
言ふ言の畏き国ぞ紅の 色にな出でそ思ひ死ぬとも
- 次の歌
-
人言を繁みか君が二鞘の 家を隔てて恋ひつつまさむ