かくしてやなほや罷らむ近からぬ
道の間をなづみ参ゐ来て
- 歌の意味
-
このようにしてやはり帰って行くのだろうか。近くもない道のりを苦労してやって来たのに。
- 鑑賞
-
巻第四 相聞 700
詞書「大伴宿祢家持の娘子の門に到りて作る歌一首」
遠い道を苦労して娘子の家の門までやって来たのに、逢えないまま帰るのだろうかと嘆く歌である。門前で待たされる男の心情を率直に詠んでいる。
作者の大伴家持は、大伴旅人の子で、万葉集の編纂に深くかかわったとされる歌人である。のちに中納言に至った。
初句「かくしてや」は、このようにしての意で、「や」は疑問を表す。
二句「なほや罷らむ」の「罷る」は退出するの意で、やはり帰って行くのだろうかの意となる。ここで切れる二句切れである。
三句「近からぬ」は、近くもないの意である。
四句「道の間を」は、道のりをの意である。
結句「なづみ参ゐ来て」の「なづむ」は行き悩む、苦労するの意で、苦労してやって来ての意となる。倒置によって嘆きの理由を示している。
まかる:貴人のもとから退出する
なづむ:行き悩む、苦労する
- 作者
-
大伴家持
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
一瀬には千たび障らひ行く水の 後にも逢はむ今にあらずとも
- 次の歌
-
はつはつに人を相見ていかにあらむ いづれの日にかまた外に見む