古典和歌stream

思ひ遣るすべの知らねば片もひの
底にぞ我れは恋ひ成りにける

歌の意味
思いを晴らす手立てもわからないので、素焼きの器の底にたまるように、片思いの底に沈んで、私はすっかり恋に染まってしまった。
鑑賞
巻第四 相聞 707

詞書「粟田女娘子の大伴宿祢家持に贈る歌二首」
 思いを晴らす手立てもわからないまま、片思いの底に沈んでしまったと詠む歌である。「片もひ」に片思いの意と、素焼きの器である「片垸」とを掛けている。原文の末尾には「土垸の中」と注する小書きがあり、「片もひ」が器を指すことを示している。
 作者の粟田女娘子は、伝未詳の女性で、大伴家持に歌を贈った。

 初句「思ひ遣る」は、思いを晴らす、心を慰めるの意である。
 二句「すべの知らねば」は、手立てもわからないのでの意である。
 三句「片もひの」は、片思いの意と、素焼きの器である片垸の意とを掛けた語である。
 四句「底にぞ我れは」は、器の底に私はの意で、係助詞「ぞ」の結びは結句の「ける」である。
 結句「恋ひ成りにける」は、恋に沈みきってしまったことだの意で、連体形で結ぶ。

かたもひ:片思いの意と、素焼きの器の意の片垸とを掛ける
おもひやる:思いを晴らす、心を慰める
作者
粟田女娘子
出典
万葉集
前の歌
はねかづら今する妹はなかりしを いづれの妹ぞここだ恋ひたる
次の歌
またも逢はむよしもあらぬか白栲の 我が衣手にいはひ留めむ