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かくばかり恋ひつつあらずは石木にも
ならましものを物思はずして

歌の意味
これほど恋い続けているくらいなら、いっそ岩や木にでもなってしまえばよかったのに。物思いなどせずに。
鑑賞
巻第四 相聞 722

詞書「大伴宿祢家持の歌一首」
 これほど恋に苦しむくらいなら、心をもたない岩や木になってしまいたかったと詠む歌である。本巻の第五百四十四首の笠金村の歌「後れ居て恋ひつつあらずは紀の国の妹背の山にあらましものを」と同じ発想をもち、恋の苦しみから逃れたいという願いを表している。
 作者の大伴家持は、大伴旅人の子で、万葉集の編纂に深くかかわったとされる歌人である。のちに中納言に至った。

 初句「かくばかり」は、これほどの意である。
 二句「恋ひつつあらずは」は八音の字余りで、恋い続けているよりはの意である。第五百四十四首の二句と同じ句である。
 三句「石木にも」は、岩や木にでもの意で、心をもたないものを挙げる。
 四句「ならましものを」の「まし」は反実仮想で、なればよかったのにの意となる。ここで切れる四句切れである。
 結句「物思はずして」は、物思いをしないでの意で、倒置によって願いの理由を示している。

いはき:岩と木。心をもたないもののたとえ
作者
大伴家持
出典
万葉集
前の歌
あしひきの山にしをれば風流なみ 我がするわざをとがめたまふな
次の歌
朝髪の思ひ乱れてかくばかり 汝姉が恋ふれぞ夢に見えける