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世の中の苦しきものにありけらし
恋にあへずて死ぬべき思へば

歌の意味
恋というものは、世の中で最も苦しいものであるらしい。恋に耐えきれずに死んでしまいそうなことを思うと。
鑑賞
巻第四 相聞 738

詞書は前の歌に続き「同じ大嬢の家持に贈る歌二首」
 恋に耐えられず死にそうなことを思うと、恋はこの世で最も苦しいものであるらしいと嘆く歌である。前歌の固い誓いとは対照的に、恋の苦しさそのものを見つめている。
 作者の大伴坂上大嬢は、大伴宿奈麻呂と坂上郎女の娘で、のちに大伴家持の正妻となった。

 初句「世の中の」は、世の中のの意である。
 二句「苦しきものに」は、苦しいものにの意である。
 三句「ありけらし」の「けらし」は過去の推定で、あるらしいの意となる。ここで切れる三句切れである。
 四句「恋にあへずて」は、恋に耐えられずにの意である。
 結句「死ぬべき思へば」は、死にそうなことを思うとの意で、倒置によって理由を示している。

あふ:耐える、こらえる
作者
大伴坂上大嬢
出典
万葉集
前の歌
かにかくに人は言ふとも若狭道の 後瀬の山の後も逢はむ君
次の歌
後瀬山後も逢はむと思へこそ 死ぬべきものを今日までも生けれ