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生ける世に我はいまだ見ず言絶えて
かくおもしろく縫へる袋は

歌の意味
生きてきたこれまでに、私はまだ見たことがない。言葉にならないほど、これほど見事に縫った袋は。
鑑賞
巻第四 相聞 746

詞書は前の歌に続き「さらに大伴宿祢家持の坂上大嬢に贈る歌十五首」
 坂上大嬢から贈られた袋を、生まれてこのかた見たことのないほど見事だとほめる歌である。贈り物への感謝とともに、それを縫った相手への愛情が込められている。
 作者の大伴家持は、大伴旅人の子で、万葉集の編纂に深くかかわったとされる歌人である。のちに中納言に至った。

 初句「生ける世に」は、生きている間にの意である。
 二句「我はいまだ見ず」は八音の字余りで、私はまだ見たことがないの意である。ここで切れる二句切れである。
 三句「言絶えて」は、言葉にならないほどの意である。
 四句「かくおもしろく」は、これほど見事にの意である。
 結句「縫へる袋は」は、縫った袋はの意で、倒置によってほめる対象を最後に示している。

ふくろ:袋。物を入れる入れ物
作者
大伴家持
出典
万葉集
前の歌
朝夕に見む時さへや我妹子が 見れど見ぬごとなほ恋しけむ
次の歌
我妹子が形見の衣下に着て 直に逢ふまでは我れ脱かめやも