古典和歌stream

百年に老舌出でてよよむとも
我れはいとはじ恋ひは増すとも

歌の意味
あなたが百歳になって、老いて舌が出て、よぼよぼになったとしても、私は嫌がりはしない。恋しさが増すことはあっても。
鑑賞
巻第四 相聞 764

詞書「大伴宿祢家持の和ふる歌一首」
 年を取ったことを気にする紀女郎に答えた家持の歌である。たとえあなたが百歳になって老いの舌を出し、よぼよぼになっても嫌いはしない、恋しさが増すことはあってもと詠む。戯れの誇張の中に、相手を思いやる心がこもっている。
 作者の大伴家持は、大伴旅人の子で、万葉集の編纂に深くかかわったとされる歌人である。のちに中納言に至った。

 初句「百年に」は、百歳になっての意である。
 二句「老舌出でて」は、老いて舌が出ての意で、年老いた姿を誇張して描く。
 三句「よよむとも」の「よよむ」は老いてよろめくの意で、よぼよぼになってもの意となる。
 四句「我れはいとはじ」の「じ」は打消意志で、私は嫌がりはしないの意となる。ここで切れる四句切れである。
 結句「恋ひは増すとも」は、恋しさが増すことはあってもの意で、倒置によって思いの深さを添えている。

よよむ:老いて腰が曲がり、よろめく
いとふ:嫌う、嫌がる
作者
大伴家持
出典
万葉集
前の歌
玉の緒を沫緒に搓りて結べらば ありて後にも逢はざらめやも
次の歌
一重山へなれるものを月夜よみ 門に出で立ち妹か待つらむ