古典和歌stream

言出しは誰が言にあるか小山田の
苗代水の中淀にして

歌の意味
先に言い出したのは誰の言葉だったのか。山田の苗代の水が途中で淀むように、途中で途絶えてしまって。
鑑賞
巻第四 相聞 776

詞書「紀女郎の家持に報へ贈る歌一首」
 前歌に答えた紀女郎の歌である。先に恋を言い出したのはあなたなのに、山田の苗代水が途中で淀むように、途中で途絶えてしまったと、家持の心変わりをなじる。
 作者の紀女郎は、紀鹿人の娘で、名を小鹿といい、安貴王の妻であった。

 初句「言出しは」は、言い出したのはの意である。
 二句「誰が言にあるか」は、誰の言葉なのかの意で、ここで切れる二句切れである。
 三句「小山田の」は、山あいの小さな田のの意である。
 四句「苗代水の」は、苗代の水のの意で、三句と合わせて結句を導く。
 結句「中淀にして」は、途中で淀んでの意で、恋の途絶えをたとえて結ぶ。

なはしろ:稲の苗を育てる田
なかよど:途中で淀むこと。途中で途絶えること
作者
紀女郎
出典
万葉集
前の歌
鶉鳴く古りにし里ゆ思へども 何ぞも妹に逢ふよしもなき
次の歌
我妹子がやどの籬を見に行かば けだし門より帰してむかも