ひさかたの天道は遠しなほなほに
家に帰りて業を為まさに
- 歌の意味
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天への道は遠い。素直に家に帰って、家業に励みなさい。
- 鑑賞
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巻第五 雑歌 801
詞書は前の歌に続き「惑へる情を反さしむる歌一首 并せて序 反歌」
天に昇る道は遠いのだから、おとなしく家に帰って生業に励むがよいと諭す一首である。長歌で世俗を離れようとする者を戒めた内容を、短く端的にまとめている。
序には、父母を敬うことは知りながら孝養を忘れ、妻子を顧みずに脱ぎ捨てた履物より軽く扱い、自ら「倍俗先生」と称して心は青雲の上に高ぶっているが、身はなお俗世にある者がいると記す。修行して道を得た聖人とはいえず、山や沢に逃れた民にすぎないとして、三綱五教を示し、歌によって惑う心を改めさせようとしたとある。左注には神亀五年七月二十一日に嘉摩郡で撰定したとあり、筑前守として部内を巡行した憶良が、儒教の教えに立って民を教え諭したものとみられる。
作者の山上憶良は、大宝元年に任じられた遣唐使の少録として唐に渡った官人で、帰国後は伯耆守や東宮に仕える役などを経て、神亀年間の末に筑前守として筑紫に赴任した。人生の苦しみや家族への情愛、貧しさなど、暮らしに根ざした主題を、漢籍や仏典の教養を背景に詠んだ歌人として知られる。
初句「ひさかたの」は「天」にかかる枕詞である。
二句「天道は遠し」は、仙人となって天に昇る道は遠く、容易には至れないことをいい、ここで句が切れる二句切れである。長歌の「天へ行かば汝がまにまに」を受けている。
三句「なほなほに」は、素直に、おとなしく、の意で、諭す口調を生む。
四句「家に帰りて」は、妻子を捨てて家を出た者に、もとの暮らしへ戻るよう促す。
結句「業を為まさに」の「業」は農業などの生業をいう。「まさ」は尊敬の助動詞「ます」の未然形、「に」は願望を表す終助詞で、相手を立てながら、励んでほしいと勧めて結ぶ。
あまぢ:天へ昇る道
なり:生業。農耕などの家の仕事
- 作者
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山上憶良
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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大野山霧立ちわたる我が嘆く おきその風に霧立ちわたる
- 次の歌
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銀も金も玉も何せむに まされる宝子にしかめやも