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銀も金も玉も何せむに
まされる宝子にしかめやも

歌の意味
銀も金も玉も、何になろうか。どんなにすぐれた宝も、子に及ぶことがあろうか。
鑑賞
巻第五 雑歌 803

詞書は前の歌に続き「子等を思ふ歌一首 并せて序 反歌」
 銀や金や玉といった宝も、子どもという宝には及ばないと言い切る一首である。親の子への愛情を最も直截に表した歌として広く知られ、憶良の代表作の一つである。
 序には、釈迦如来も衆生を等しく思うことはわが子羅睺羅を思うのと同じだと説き、また愛は子に過ぎるものはないと説いたとある。至極の聖人でさえ子を愛する心をもつのだから、まして世の人で子を愛さない者があろうかと述べ、瓜を食べれば子を思い、栗を食べればさらに偲ばれるという長歌に続けて、この反歌が置かれる。左注には神亀五年七月二十一日に嘉摩郡で撰定したとある。
 作者の山上憶良は、大宝元年に任じられた遣唐使の少録として唐に渡った官人で、帰国後は伯耆守や東宮に仕える役などを経て、神亀年間の末に筑前守として筑紫に赴任した。人生の苦しみや家族への情愛、貧しさなど、暮らしに根ざした主題を、漢籍や仏典の教養を背景に詠んだ歌人として知られる。

 初句「銀も」は「しろかね」と読み、銀のことである。ここから世の宝を列挙していく。
 二句「金も玉も」は、「くがね」すなわち金と、玉すなわち宝石を重ね、「も」を三度繰り返して世の宝を並べ立てる。
 三句「何せむに」は、何になろうか、何の役にも立たないという反語で、ここで句が切れる三句切れである。
 四句「まされる宝」は、それらにまさるすぐれた宝をいい、どれほどの宝であっても、の意を含む。
 結句「子にしかめやも」の「しく」は及ぶ意、「めやも」は反語で、子に及ぶものがあろうか、いやないと強く言い切って結ぶ。

しろかね:銀
くがね:金
しく:及ぶ、匹敵する
作者
山上憶良
出典
万葉集
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ひさかたの天道は遠しなほなほに 家に帰りて業を為まさに
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常磐なすかくしもがもと思へども 世の事なれば留みかねつも