うつつには逢ふよしもなしぬばたまの
夜の夢にを継ぎて見えこそ
- 歌の意味
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現実には逢うすべもない。せめて夜の夢に、絶えず見えてほしい。
- 鑑賞
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巻第五 雑歌 807
詞書は前の歌に続き「歌詞両首 大宰帥大伴卿」
現実には逢う手だてがないので、せめて夜の夢に絶えず現れてほしいと願う一首である。前歌の竜の馬という空想から一転し、遠く離れた人と逢えるのは夢の中だけだという切実な思いを述べている。
題詞には歌に先立って漢文の書簡が置かれ、いただいたお手紙を拝して趣旨をよく承ったこと、たちまち天の川に隔てられた恋しさを覚え、また橋の柱を抱いて待ち続けた人のような思いに心を痛めること、ただ去る者と留まる者が互いに無事であることを願い、雲の晴れる日を待つばかりであることを記す。都の知人から届いた手紙への返書として、二首の歌が添えられたものである。
作者の大伴旅人は、大納言大伴安麻呂の子で、大伴家持の父である。神亀年間の末に大宰帥として筑紫に下り、天平二年に大納言となって帰京し、翌年に没した。漢詩文や老荘思想に通じ、大宰府で山上憶良らと文雅の交わりを結び、その集まりは筑紫歌壇と呼ばれる。
初句「うつつには」は、現実には、の意で、夢と対比される。
二句「逢ふよしもなし」は、逢う手だてもないことをいい、ここで句が切れる二句切れである。
三句「ぬばたまの」は「夜」にかかる枕詞である。
四句「夜の夢にを」の「夢」は「いめ」と読み、「を」は強意の間投助詞である。
結句「継ぎて見えこそ」の「継ぎて」は絶え間なく、「こそ」は願望の終助詞で、せめて夢の中で続けて逢いたいと願う。次の答歌の第八百九首は「夢にし見えむ」と応じている。
うつつ:現実
いめ:夢の古い形
- 作者
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大伴旅人
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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竜の馬も今も得てしかあをによし 奈良の都に行きて来むため
- 次の歌
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竜の馬を我れは求めむあをによし 奈良の都に来む人のたに