竜の馬を我れは求めむあをによし
奈良の都に来む人のたに
- 歌の意味
-
竜の馬を私は探し求めよう。奈良の都に来るあなたのために。
- 鑑賞
-
巻第五 雑歌 808
詞書「答ふる歌二首」
竜の馬を私が探し求めよう、奈良の都にあなたが来るためにと答える一首である。旅人が第八百六首で竜の馬を得たいと詠んだのに対し、その馬を自分が求めて差し上げようと応じ、都で待つ側の思いを示している。
都から寄せられた答歌で、作者の名は記されておらず、誰の作かは明らかでない。旅人の書簡と歌を受け取った都の知人が返したものとみられる。
初句「竜の馬を」は、第八百六首の初句「竜の馬も」をそのまま受け、「も」を「を」に変えて応じている。
二句「我れは求めむ」の「む」は意志で、自分が探し求めようと答え、ここで句が切れる。
三句「あをによし」は「奈良」にかかる枕詞で、贈歌の三句と同じ語を置いて呼応する。
四句「奈良の都に」も贈歌の四句と同じで、贈答の形を整えている。
結句「来む人のたに」の「たに」は「ために」の意で、都へ来ようとする人のためにと結ぶ。贈歌の「行きて来むため」に対し、迎える側からの「来む人のため」と構図を反転させている。
たに:「ため」の意。「ために」と同じ
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
うつつには逢ふよしもなしぬばたまの 夜の夢にを継ぎて見えこそ
- 次の歌
-
直に逢はずあらくも多く敷栲の 枕去らずて夢にし見えむ