春さればまづ咲くやどの梅の花
独り見つつや春日暮らさむ
- 歌の意味
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春になると真っ先に咲くこの家の梅の花を、ひとりで見ながら春の日を暮らすことなどしようか。
- 鑑賞
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巻第五 雑歌 818
詞書は前の歌に続き「梅花の歌三十二首 并せて序」
春になると真っ先に咲く梅の花を、ひとりで見て春の日を過ごすものだろうかと詠む一首である。「や」を反語とみて、皆でともに見て楽しもうという意に解するのが一般的だが、妻を亡くした主人旅人の孤独を思いやった歌とみる説もある。宴の歌の中で「独り」という語を用いた点に、憶良らしい陰影がある。
天平二年正月十三日、大宰帥大伴旅人の邸宅に大宰府の官人や九州諸国の国司らが集い、庭の梅を題に詠み合った「梅花の宴」の歌三十二首の一首である。漢文の序は、初春の令月に気は良く風は和らぎ、梅は鏡の前の白粉のように白く開き、蘭は身に帯びた香のように薫ると記し、令和の元号の典拠となったことでも知られる。序は、中国の詩文に落梅の篇があるように、園の梅を題に短歌を詠もうと結ばれている。歌の末尾に「筑前守山上大夫」とある。
作者の山上憶良は、大宝元年に任じられた遣唐使の少録として唐に渡った官人で、帰国後は伯耆守や東宮に仕える役などを経て、神亀年間の末に筑前守として筑紫に赴任した。人生の苦しみや家族への情愛、貧しさなど、暮らしに根ざした主題を、漢籍や仏典の教養を背景に詠んだ歌人として知られる。
初句「春されば」は、春になると、の意で、「さる」は時節が移り来る意である。
二句「まづ咲くやどの」は、春に先駆けて咲く梅の性質をいい、「やど」は家の庭先を指す。
三句「梅の花」は宴の主題で、ここで上の句をまとめる。
四句「独り見つつや」の「や」は係助詞で、結句の「む」と呼応する。反語として、ひとりで見ることなどしようか、皆で見ようという意にとるのが通説である。
結句「春日暮らさむ」は、春の長い一日を過ごそうか、の意で、四句の「や」を連体形「む」で受けて結ぶ。
やど:家の庭先、屋敷
さる:時節が移って来る
- 作者
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山上憶良
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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梅の花咲きたる園の青柳は 蘰にすべくなりにけらずや
- 次の歌
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世の中は恋繁しゑやかくしあらば 梅の花にもならましものを