梅の花咲きて散りなば桜花
継ぎて咲くべくなりにてあらずや
- 歌の意味
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梅の花が咲いて散ってしまったなら、桜の花が続いて咲くようになっているではないか。
- 鑑賞
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巻第五 雑歌 829
詞書は前の歌に続き「梅花の歌三十二首 并せて序」
梅が咲いて散っても、続いて桜が咲くことになっているではないかと詠む一首である。散る梅を惜しむ歌が多い中で、次に咲く桜へと季節の移り変わりを見通し、春の楽しみの尽きないことを述べて一座を慰めている。
天平二年正月十三日、大宰帥大伴旅人の邸宅に大宰府の官人や九州諸国の国司らが集い、庭の梅を題に詠み合った「梅花の宴」の歌三十二首の一首である。漢文の序は、初春の令月に気は良く風は和らぎ、梅は鏡の前の白粉のように白く開き、蘭は身に帯びた香のように薫ると記し、令和の元号の典拠となったことでも知られる。序は、中国の詩文に落梅の篇があるように、園の梅を題に短歌を詠もうと結ばれている。歌の末尾に「薬師張氏福子」とある。薬師は大宰府に置かれた医師である。
作者の張福子は、渡来系の氏族とみられる張氏の人で、大宰府の医師の任にあった。
初句「梅の花」は、宴の主題を掲げる。
二句「咲きて散りなば」の「なば」は、…してしまったなら、という仮定で、梅の盛りの後を思う。
三句「桜花」は、梅に続いて咲く春の花として登場し、梅花の宴の歌の中では珍しく桜を詠み込んでいる。
四句「継ぎて咲くべく」は、続いて咲くはずに、の意である。
結句「なりにてあらずや」は、なっているではないか、と同意を求める表現で、第八百十七首の「なりにけらずや」と同じく一座に呼びかける口調で結ぶ。
つぐ:続く、後に続く
- 作者
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張福子
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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人ごとに折りかざしつつ遊べども いやめづらしき梅の花かも
- 次の歌
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万代に年は来経とも梅の花 絶ゆることなく咲きわたるべし